平成19年度は、グローバリゼーションにおける民俗文化変容についての現地調査・資料調査を進めるとともに、関連学会での報告、論文の執筆を行った。 1 現地調査に関しては、前年度より引き続き石川県輪島市白米地区の棚田をめぐる農業政策、文化財行政、観光化等について実態調査を行った。文化的景観の保全と活用のための施策が着々と進展する一方、過疎化・高齢化にともなう後継者不足は依然として解決をみない村の現状を確認した。 2 資料調査に関しては、民俗写真に関する資料収集・分析につとめ、民俗的・文化的な景観のイメージ生産・流通・消費のあり方を検討した。 3 日本民俗学会第59回年会(10月7日、大谷大学)の分科会「景観と民俗学」において、民俗学における景観研究の現状と課題に関する展望を報告した。そのなかで、従来の民俗学が研究を蓄積してきた民家、集落、生業、儀礼、伝承に関する景観と、近年急速に前景化しつつある言説化・商業化・制度化されつつある景観との乖離を、「発生的景観」と「統制的景観」のギャップとして整理し、その間を埋める作業の必要性を検討した。 4 論文「今西錦司『村と人間』という邂逅」および「ニッポンの民俗写真、あるいは<民俗学者>としての写真家」を発表した。前者では農村モノグラフの古典を手がかりに、日本農村の現代史を展望し、後者では、民俗写真を切り口に、日本における民俗表象の歴史を概観した。 これらを通じて、当該課題に対して、ミクロな現地社会の現状分析と、マクロなイメージ生産の構造分析とをそれぞれ行った。
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