今年度は中部アフリカのカメルーンにおけるろう教育とその歴史に関する補足的調査を行うとともに、3年間の研究成果を発信し、さらに英文で出版するための準備を進めた。 ろう者のためのキリスト教ミッション(CMD)がろう教育事業を展開した中部アフリカのカメルーンを訪れ、現地調査を行った。カメルーンのろう者団体の協力のもと、ろう者およびろう教育関係者に対するインタビュー、文献資料収集、手話のビデオ収録を行い、この地域のろう者によるろう教育事業の遺産ともいうべき接触手話言語.(フランス語圏アフリカ手話)の記載のためのデータを手に入れた。 3年間にわたる本研究の成果を、おもに以下の三つのテーマに沿わせつつ、複数の論文、書籍、学会発表の形で公表した。 (1)アフリカという個別地域のろう者と手話言語に関する記載的研究。 (2)少数言語を話すろう者のエンパワーメントに資する新しい開発モデルの提唱。 (3)文化人類学的なフィールドワークの手法が言語的・文化的マイノリティの人間開発に対して行いうる寄与に関する検討。 アフリカにおける手話言語とそれを話すろう者の個別研究を通じ、応用人類学/実践人類学の領域に新たな知見を加える研究を行い、発表した。さちに、国際開発学会奨励賞を受賞した本研究の成果『アフリカのろう者と手話の歴史』(単著、明石書店、2006年)を英文出版するための準備を進めた。
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