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2005 年度 実績報告書

グローバリゼーションによるホロコースト表象の変容に関する博物館人類学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 17720235
研究機関国立歴史民俗博物館

研究代表者

寺田 匡宏  国立歴史民俗博物館, 研究部, 外来研究員 (30399266)

キーワード(1)ミュージアム / ホロコースト / 展示 / ドイツ / ポーランド / グローバリゼーション / アウシュヴィッツ / ユダヤ博物館
研究概要

この研究の目的は、グローバリゼーションの進展に伴って、ミュージアムにおけるホロコーストの表現にどのような特徴が現れているかを探ることである。とくに、ホロコーストのような「負の記憶」に関しては、「体験型展示」の導入の仕方やどこまで「再現」を行うかに関して、国や施設によって位置づけ方が異なる。これらに関して対照的な考え方を持つドイツ、ポーランド、アメリカにおける各施設の展示技法を実証的に分析することによって、グローバリゼーション下におけるミュージアムでのホロコースト表象の特質を明らかにすることを目的とする。
本年度はポーランドとドイツにおいて調査を行い、個別の特徴を明らかにした。ポーランドでは、絶滅収容所跡地がミュージアムになっている施設を調査した。調査対象は、アウシュヴィッツ、マイダネク、トレブリンカ、ベウジェッツである。いずれもナチス・ドイツが第二次大戦中にユダヤ人を大量に虐殺した収容所である。ポーランドは、冷戦期には共産主義陣営の一員だったが、ベルリンの壁崩壊後、民主化され、2005年にはEUに加盟した。それに伴ってホロコーストの展示にも変化が見られることがわかった。たとえばアウシュヴィッツ・ミュージアムは約60年の歴史があるが、近年、現代思想や現代アートの影響を取り入れた展示技法が浸透しつつある。また、ベウジェッツ・ミュージアムは2004年に開設した新しいミュージアムだが、ここも同様に、「再現」批判を考慮した展示技法を行っていた。
ドイツでは、ベルリンのユダヤ博物館とホロコースト・メモリアル、ザクセンハウゼン収容所ミュージアムを調査した。いずれの施設も1990年代以降に建設されたか、リニューアルが行われたものである。とくにユダヤ博物館とホロコーストメモリアルでは、建築が出来事の表現の不可能性を示唆する一方、展示では実証的にホロコーストが描き出されるという技法が共通していた。これは「再現」を過剰に行う傾向への批判的姿勢であり、いたずらに「再現」を行わなくとも、ホロコーストを後世に伝えることができるという現代思想や現代アートの成果に基づいている。これはポーランドにおける展示技法とも共通しており、グローバリゼーション下におけるホロコースト表象の特質のひとつであると思われる。

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公開日: 2007-04-02   更新日: 2016-04-21  

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