本年度においては、国内外での史料の調査・収集・整理につとめた。 とりわけ、清代初期の恤刑(ひいては当時の裁判システム)の手続的実態を解明するという本研究の目的からは、恤刑に携わった官僚が各地方における恤刑実施状況について皇帝に報告するために提出した上奏文を中心に、清代初期の行政文書を精査することが重要となる。 日本でも閲覧可能な、台湾・中央研究院歴史語言研究所から出された『明清 案』は、当該研究所が所蔵する清代の上奏文のうち、一部を収めたものである。この『明清 案』については研究代表者の所属する研究機関でも所蔵しており、利用に簡便であるため、本研究においては網羅的にかつ詳細に閲覧し、とりわけ本研究に関連するものを見分けるべく精査した。 ただし、中央研究院に所蔵されている上奏文はそれでも全体の一部に過ぎず、大半は中国・北京にある中国第一歴史档案館に所蔵されている。そこで、史料の偏りを防ぎ、データの客観性を保つため、当該档案館に赴き、清初の上奏文を同様に閲覧・精査した。 これら国内・海外において精査した、とりわけ本研究において必要と考えられる上奏文に関しては、電子複写等をおこなうとともに、当該上奏文が提出された年月日・提出者の名およびその職名・さらにいずれの地域の恤刑に関するものなのかといったデータをパソコンに入力している。 上奏文以外にも、清初の官僚が恤刑も含め当時の裁判手続について如何なる認識を抱いていたのか探るため、彼らの記した手記等を調査・閲覧のうえ、必要箇所につき筆写・電子複写をおこなった。国内においては東京大学東洋文化研究所や国会図書館などで、国外においては、北京の中国国家図書館や北京大学図書館などでこの作業をおこなった。 これら収集した史料の精読を進めている。
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