本年度は、前年度に引き続き、国家の直接的な介入(規制的手法)以外の法的手法により環境リスクを制御する可能性について考察すると同時に、研究のとりまとめを行った。 その一つとして注目したのが廃棄物施設等の許可申請前に展開される行政指導(事前指導)である。従来、この種の行政指導については、許可申請者側の権利保護の観点から抑制的に行うべきとの見解が多く見受けられるが、これを環境リスク規制手法として見た場合、決して唾棄すべき対象ではなく、むしろその戦略的な運用が期待というされることを、拙稿「行政指導による産業廃棄物処分業の許可留保をめぐる国家賠償請求事件(判例評釈)」自治研究83巻1号の中で提言した。 研究のまとめとして、これまでに検討してきた「環境リスク規制における国家と社会の関係」を「協働化の進展」として、理論的にとらえなおした。そして、拙稿「協働による環境リスクの法的制御(上)(下)」自治研究83巻3号・4号の中で、協働の概念、法的問題、協働に際して充たすべき法的条件、及び政策的条件について一般理論化した。これにより、とりわけ不確かさを特徴とする環境リスクの法的制御にあたっては、従来型の規制的手法をさらに実効化させるために、また、規制的手法を補完し、法的制御全体の機能性を高めるために「国家と社会の協働」が必要であるが、その際には、様々な問題点を克服する必要があるという結論を得た。これにより、本研究はさしあたりの終着点を見いだしたことになる。
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