本年度は昨年度の研究作業を踏まえ、昨年度未収集に留まった史料や研究の進展により新たに収集が必要となった史料の所蔵先直接訪問による入手に努めると共に、史料の分析を中心に行なった。前者につき具体的には、第一に。昨年度に予算の関係から一部を購入できなかった国立国会図書館所蔵「明治期刊行図書マイクロ版集成」行政法編を購入し揃えた。また、昨年度に引き続き明治期に刊行された公法学(国法学・憲法学・行政法学)に関する著書論文及びその基礎とされたドイツの文献を購入乃至取り寄せ依頼すると共に、国立国会図書館(特に憲政資料室)、国立公文書館、大学図書館等から史料を調査収集したが、特に今年度は、国立国会図書館憲政資料室所蔵の井上毅文書、伊東巳代治関係文書及び憲法史編纂会収集文書を綿密に調査した。 以上のようにして収集された史料に就いて、現在学説に於て一般的となっている諸概念の前提となっている諸制度の生成過程の検討を中心とした分析を行なった。現段階迄に、(1)行政官庁概念乃至軍務配分規定の明治期に於ける生成過程、(2)立法事項の明治期実務に於ける確定過程、の二点に就いて、具体的に研究が進展しており、その成果を取りまとめ公刊する準備が進んでいる。特に前者に就いては、これ迄学説上明らかにされていなかった、各省大臣に対する事務配分を行なう我国の(立法)慣行が如何なる経緯で成立したかを解明することができる目処が立っており、速やかに論考を公刊する予定である。その他、我国行政法学説に於ける諸概念の受容につき、今後検討すべき論点を幾つか見出しつつある。
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