環境マネジメントシステム(EMS)の政策手法としての位置づけ、他の政策手法との関連性や相互補完性について整理した。さらに、環境規制においてEMSが果たしうる役割や機能を検討するために、ISO14001、EUのEMAS、我が国のエコアクション21というEMS規格が、事業者による環境パフォーマンス等の向上に実際につながっているのか否かを、イギリスやEUの研究成果等を踏まえて分析した。さらに、EUのEMAS IIの内容を検討した。 その結果、ISO14001やEUのEMASという外部検証をともなうEMSがある場合のほうが、ない場合に比べ、記録・情報活用・施設維持管理・訓練・報告といった手続面において高いパフォーマンスの維持につながっていることが明らかになった。一方、環境関連事故・法令遵守・苦情・起訴といった側面では、EMSがある場合もない場合も差はみられなかった。さらに、EMS導入事業者のほうがそうでない事業者よりもパフォーマンスの向上は早くなされ、その傾向はISO14001よりもEMASのほうが強くみられたという結果も出ている。 今後は、とりわけ環境規制上の優遇措置を講じる際の前提条件として、事業者によるEMS規格の認証取得を位置づける場合に、当該EMS規格に求められる要素(たとえば、環境報告書の作成・公表義務づけと第三者認証を位置づけるかどうかなど)を見極めるとともに、環境規制の実効性確保に資するEMS規格のあり方を検討していく。
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