本研究の主眼は、政策目的の「実効性」に重点を置いた理論構築を目指すことである。計画一年目の本年は、予備的作業としての資料収集・理論整理を行った。 まず従来考えられてきた、法律と条例の抵触問題や、罰則規定の置き方などの論点についての新たな動向を探った。近時はいわゆる独自条例の制定が目立つが、旧来のような形での国法との抵触は問題となることが少ない。条例の位置づけが高まってきたことの証左であろう。しかし、各地で郊外型大規模小売店の立地規制などの動きが急速に活発化しつつあり、今後は再び問題が顕在化する可能性も高い。 他方で、厳しい財政状況の下で、環境保全等を実現するための新たなタイプの条例が増加していることが判明した。特に行為規制型の分野では過料や、臨時職員の活用が目立つ。このことは本研究が中心に据える、有効性の高い実効性確保手段の導入、より少ない財政的リソースで最大の政策効果を挙げることを指向する経済的インセンティヴ手法、一般私人の政策過程への参加(協働)などが実務的にも定着してきたことを意味するものである。 これらの現象は、地方公共団体におけるいわゆる政策法務、自治体法務などの普及に伴い、より一層見られるようになることが明らかである。しかし課題も明らかになりつつある。例えば、制裁的な意味を有する氏名公表措置のための事前手続や、公表の基準をいかにすべきか。あるいはゴミのポイ捨てをした者に対して、清掃作業を強制することを規定することが可能かなど、実務レベルからの疑問も急増している。これらの論点に対しては何らかの「理論上の」回答が用意されなければならない。これまでに得られた蓄積に加え、これらの課題に対する方向性を来年度は探求してゆく予定である。そして最終的な成果の公表につなげてゆきたい。
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