内外の生命倫理政策に関する文献およびインターネット等から情報収集し、パソコンで整理・分析して、生命倫理の諸問題の法的検討を進めた。 また、文部科学省・生殖補助医療研究専門委員会、人クローン胚研究利用作業部会やHAB研究機構・人試料委員会等を傍聴するとともに、科学コミュニケーションに関するお茶の水女子大学公開講座に参加し、また、日本医事法学会、日本生命倫理学会、日本医学哲学・倫理学会、「生命の尊厳」研究会、「特定疾患患者の生活の質(QOL)の向上に関する研究」研究報告会等に参加して、生命倫理政策の意思決定に関して情報の収集・交換を行い、検討を進めた。その結果、次のような知見が得られた。 主としてミクロな意思決定について ・いわゆるインフォームド・コンセントの法理では、人体の一部を採取する際の要件として本人の自己決定が語られているが、その根拠とされる「自己決定権」はさまざまな側面をもっており、また、法学の各分野で用語法が異なっているように思われ、整理が必要である。 ・個人の行動の自由という意味での自己決定権と生命・身体に対する権利は、分けて考えることが有益である。 ・説明義務の根拠やどのようなときに本人の自己決定があるとされるのかに関する民刑事法の議論に、公法学も注目していくことが必要である。 このような知見は、公表論文にまとめた。 主としてマクロな意思決定について ・科学技術の社会的ガバナンスが、大きな社会的・政策的課題になってきている。 ・科学技術への「民主的コントロール」に考える際には、国家権力の立憲主義的限界をふまえつつ、国家を公共性の探求装置として捉えることが有益である。 このような知見は、論文にまとめるべく、整理検討中である。
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