本年度は、水道法制と水道水給水拒否について、日米の比較研究を行った。 日本の場合、公企業法として水道法が存在し、水道事業の規制している。水道法は、水道事業の市町村経営原則を規定している。建築基準法やまちづくり要綱に違反した建築物に対する水道水給水拒否、あるいは、水不足を理由とする水道水給水拒否の判例に見られるように、市町村は、まちづくり政策の実現手段として水道水給水拒否を用いてきた。 アメリカの場合、水道水の給水体制は州により異なり、経営主体は公営のものと私営のものとがある。また公営の場合も、市水道部や郡水道部のような、自治体や郡の部局が水道事業を行う、あるいは、郡水道区や自治水道区のような特別地区が水道事業を行うように、多様な主体が水道事業を営んでいる。 アメリカにおいても、日本の志免町事件のように、水不足を理由として水道接続拒否を行う事例が見られ、しばしば裁判となっている。アメリカの判例の枠組みによると都市計画規制のために水道接続拒否を行うことは否定的に解されるが、水不足の場合、許容される事例が多い。そして学説からは水不足を理由とする接続拒否も結果的に成長管理となっていることが指摘されている。 このように、水道水給水拒否は都市の成長管理としても機能するのであり、水道水給水契約の性質は都市法の観点も加味されて解釈される必要がある。 上の研究成果については論文が脱稿済みであり、公表予定である。
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