本研究の目的は、現代国際法における「自衛権」概念を再構成することによって、その意味を明らかにし、その成果を国際的に問うことにある。 本研究の1年目である本年度は、第二次世界大戦以降の国家実行およびそれに関する国際連合諸機関における議論等を検討する計画であった。実際には、9月末まで英国オックスフォード大学にて在外研究に従事しており、その間、本研究の基盤となる、国連憲章制定時に存在した慣習法上の自衛権の内容を明らかにする作業に専念していた。その結果、憲章制定時に存在した慣習法上の自衛権が、「領域侵害正当化型自衛権」と「武力行使正当化型自衛権」という、歴史的経緯、機能および発動要件を異にする2つの概念に分類されること、後者の中で個別的自衛権と集団的自衛権の先駆とで発動要件が異なることが明らかになった。現在、同大学Vaughan Lowe教授の助言に従い、この研究の出版に向けた準備をほぼ終えたところである。 在外研究から帰国後、第二次大戦後の実行等の検討に着手した。その中でも、上記「領域侵害正当化自衛権」の典型例として、非国家主体に対する「自衛権」の行使という問題に焦点を当てることとした。この点は、2001年9月11日のいわゆる「米国同時多発テロ」に対して米国等が行った「報復攻撃」にも関わるものであり、その国際法上の合法性について、見解が分かれている。この点に関する第二次世界大戦後の実行は、非国家主体に対する自衛権の行使の主張が非難されたケースがある一方で、こうした自衛権概念に合致するような越境軍事活動が、近時においても各地で行われており、現在これらの分析を進めているところである。この点について、2006年5月の世界法学会において報告する予定である。
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