本研究における2005年度の主たる目標は対抗措置を定める紛争処理条項を含む条約の調査・収集とそれら資料を検討の上でデータベース化を行うことにあった。そのため本年度においては、今日の航空業界における主要な航空企業を有する米国、英国、ドイツ、オランダ及び日本などが締結する航空協定をその特徴ごとに整理し、順次、データベース化した。本データベースでは航空協定に定められる権利の類型、輸送力条項の特徴、価格設定条項の特徴、指定航空企業に対する規制措置の特徴、紛争処理条項の特徴などに着目した検索、及び協定ごとの比較が可能となるよう、作業を進めている。 現在までに収集した資料に基づく検討においては、航空協定における対抗措置については以下の2種類があることが確認された。 一つは、相手締約国あるいはその指定航空企業が航空協定(及び同協定によって遵守することが求められている国内法令)に違反した場合に執ることが認められる措置である。具体的には協定により与えられている権利・便益の供与を停止することができる旨が定められている。 もう一つは紛争処理規定において、航空協定の解釈適用をめぐる紛争を処理する過程において執ることが明示的に認められているものである。典型的には、仲裁裁判所による判決が下されたにもかかわらず、依然としてあいて締約国が問題とされる措置を継続する場合、協定により与えられている権利・便益の供与を停止することができるとするものである。 来年度はこれらの措置につき、両者を包括的に紛争処理過程における補助手段として捉えうるか、それとも別個の性質を有する措置としてみるべきかという問題をはじめとして、一層の検討を進めるとともに、他分野、特に経済連携協定に見られる対抗措置規定を検討し、両者の比較検討を行う必要がある。
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