平成19年度は、前年度に引き続き、医療保障制度について経済学的な知見を導入した分析をするめた。とくに新制度派経済学や取引費用経済学の知見をもとに、わが国め医療政策のあり方を検討した。検討にあたっては特に参照したのは、A. S. Preker、A. Hardingらの研究である。Prekerらの分析は、医療サービス市場のコンテスタビリティと情報の非対称性をもとに医療サービスの分類を試みるものである。この作業をもとに、情報の非対称性と市場の競争性、市場への参入可能性を基本的な視点として、近年の医療制度改革(特に第5次療法改正)について検討を行った。この作業では、特に、医療法上の広告規制、医療計画、医療機能情報提供制度、事業者団体による競争制限行為を題材として取り上げた。外来診療と入院医療、慢性疾患と急性疾患などの疾病の煩型に応じて医療サービスの性格が異なること、これに対応して、医療サービス市場のあり方や規制、情報提供のあり方も異なったものとなる可能性があることを指摘した。この研究の成果の一部は、雑誌論文として公表した。 このほか、医療・介護サービスにおける情報提供体制のあり方についても検討を行った。検討の成果の一部は、2008年に論文として公表することを予定している。 設備備品費については、以上の作業に必要な基礎的文献の整備と資料収集のために用いた。また、旅費については、本研究の参考となる学会や研究会への参加と報告、資料収集などに使用した。
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