我が国における犯罪被害者をめぐる施策について、まず、現行法上の被害者保護制度に関し、平成17年4月に証人尋問における遮へい措置及びビデオリンク方式の合憲性を認める最高裁判所判例が出されたことから、これを被害者支援・保護と被告人の権利との合理的調整のあり方如何という見地から理論的に分析・検討し、その成果を複数の研究会で発表したほか、別掲の通り判例評釈として公表した。次に、平成17年4月より、犯罪被害者等基本法に基づく犯罪被害者等基本計画検討会が11回にわたり開催され、同年12月に犯罪被害者等基本計画が策定・公表されたことから、同検討会の議事録及び同基本計画を詳細に検討した。これらの研究を通じ、今後の被害者関連施策のあり方、とくに刑事手続への被害者関与のあり方について、一層の多角的・比較法的検討が必要であることを改めて認識するに至った。中でも、上記基本計画においては、「公訴参加制度を含め、犯罪被害者等が刑事裁判手続に直接関与することのできる制度について、我が国にふさわしいものを新たに導入する方向で必要な検討を行」うとされているところ、そこに例示される「公訴参加制度」が「我が国にふさわしいもの」であるか否かについては、同制度と我が国の刑事訴訟の基本構造との関係や全体的な(ありうる)被害者関連施策における同制度の位置づけ(重要度)如何という観点からの慎重かつ綿密な検討が不可欠であると考えられ(なお同基本計画も、「公訴参加制度」が「我が国にふさわしいもの」であると直ちに結論づけるものではないと解される)、このような関心から、諸外国、とりわけ公訴参加制度を有するドイツと、かかる制度を有しないアメリカについて、広く刑事訴訟の構造一般や被害者関連施策全般に関する文献を多数収集し、それらの精読・分析を、相互に比較することも含めて行った。
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