まず、昨年度に引き続き、現行法上の被害者保護制度のうち証人尋問における遮へい措置及びビデオリンク方式につき、その合憲性を認めた平成17年の最高裁判所判例及び各種判例評釈の検討を通じて、さらに思索を深めた。その成果の一部は、『判例講義・憲法』(分担執筆)(悠々社)において公刊される予定である(但し、諸般の事情から、同書の刊行時期は未定である)。 また、同じく昨年度に引き続き、ドイツやアメリカ等の諸外国の被害者関連施策さらには刑事手続の構造一般に関する文献を多数収集、精読して分析を加え、比較法的研究を行うことにより、各国の刑事手続の基本的構造(ないし手続関与者の役割)と被害者関連施策のあり方との関係を解明しようと努めた。それとともに、平成17年12月に策定された犯罪被害者等基本計画を受けて、平成18年10月より法制審議会刑事法(犯罪被害者関係)部会が開催され、刑事手続において犯罪被害者等の権利利益の一層の保護を図るための法整備に関する審議が開始されたことから、同審議会部会の議事録等を詳細に検討・分析しながら、わが国においてあるべき刑事手続上の被害者関連施策について思索を深めた。これらの研究の具体的成果は、平成18年12月の「刑事司法研究会」において発表したほか、後掲の雑誌論文として公表した。同論文では、被害者関連施策のうちとくに刑事裁判への「直接関与」の制度を中心に考察を行い、同制度と刑事訴訟の基本構造等との関係、同制度導入による被告人の諸権利への影響、同制度を求める被害者のニーズの所在、といった問題点を整理・分析した上で、前記法制審議会部会においても審議された各種の具体的な「直接関与」制度(その一部は法制審の答申を経て策定された「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」に盛り込まれている)の効用と弊害を吟味し、それらの導入の当否を検討した。
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