ドイツにおける違法の統一性をめぐる問題状況、とりわけ、ドイツの刑事手続において付帯私訴が違法性概念に及ぼす影響について、以下のことが明らかになった。 ドイツの刑事手続において、被害者は、私人訴追、訴訟参加及び付帯私訴を申し立てることができる。私人訴追は、住居侵入、侮辱、信書の秘密に対する罪、傷害、脅迫、器物損壊等について、検事局に訴追を求めることなく、被害者が訴追できる制度であり、訴訟参加は、私人訴追者となりうる者の他、犯罪行為により死亡した者の親族等が参加人として公訴に加わる制度である。私人訴追は、手数料の予納や訴訟費用の担保提供が求められうることやこれらの費用が原則として被告人に有罪判決が下された場合にしか返還されないことから、あまり活用されていない。訴訟参加は、一方的な私讐につながるという批判の他、国家訴追機関を利用して、後に提起する民法上の損害賠償請求の準備をするという濫用的実態からも問題視されている。 本研究の中心テーマである付帯私訴は、犯罪行為から生じた財産権上の請求を刑事手続において行うものであるが、付帯私訴の申し立てについては、被告人が無罪とされかつ保安処分も言い渡されないときや申し立てに理由がないと認められるときの他、刑事手続において処理するのが適当でないときも、裁判所は裁判しないとされている。ドイツにおいては、理論的可能性はあるものの、実際上、付帯私訴の申し立てはほとんど排除される。被害者の救済は、付帯私訴によるよりも、調停や和解、被疑者による一定の給付を条件とした手続打ち切り、さらには、特別法上の諸給付に求められることが多い。 このように、ドイツでは被害者の救済は(刑事)訴訟外で図られる傾向が強く、フランスに比して、付帯私訴が刑事手続で担う役割はそれほど大きくないことが判明した。
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