本年度は、わが国における児童虐待防止に向けた対応の実際を研究し、制度運用上の問題点を探るため、東京都、大阪府、千葉県、青森県において関係者への聞き取り調査を行い、特に、被害児童の発見・通告制度、児童の保護制度、加害者である親への対応、関係機関の連携のあり方の状況等を中心に質問を行った。その結果、主に、以下の点が明らかになった。 ・「虐待の疑いがあれば通報」という法改正が行われたため、各地で、泣き声通告、怒鳴り声通告が増加している ・通報後の安全確認を直ちに行えるほどマンパワーがない ・児童相談所から警察への告発件数は少数に留まっている ・一時保護所の数がとにかく十分ではない ・一時保護した子どもの中にはADHDやアスペルガー症候群など医療的手当ての必要な者が増加している ・児童相談所にとって福祉的・強権的側面双方のバランスをとることは困難である ・親への指導措置は強制力を背景としているわけではないので効果が期待できない ・児童福祉法28条1項の措置を行った場合に、2年毎に更新しなければならなくなったが(同法28条2項)、そもそも28条申し立てを行うのは難しいケースのみであり、それを、2年ごとに繰り返せというのはかなり難しい ・母親がDV被害で一時保護されている者もおり、母親・子どもの双方の保護をどう有機的に行うかが難しい これらの点については、来年度に比較法研究を行い、問題克服のためにはどのような制度の構築が望ましいかを検討していきたいと考えている。
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