1 下記の研究発表のほか、第三者のためにする契約についての日本の判例および学説を網羅的に検討したものを公表した(中馬義直執筆・新堂明子補訂「§§537-539〔第三者のためにする契約〕谷口友平=五十嵐清編『新版注釈民法(13)債権(4)契約総則』(有斐閣、2006年10月)691・792頁)。 2 昨年に引き続き、第三者に対する契約責任と不法行為責任の交錯についての研究を進展させた。これは、契約の効力は相対的であることが原則であるが(契約により第三者は権利を得ることもなく義務を負うこともない)(契約の相対効)、その例外を考察するものである(契約の対第三者効)。 3 2との関連で、イギリス法、さらには、ヨーロッパ各国法における純粋経済損失の賠償認否についての基礎的な研究に着手した。 4 2と3の研究から得られた知見は、以下のとおりである。第三者のためにする契約ないし第三者のための保護効を伴う契約が問題となる局面とは、A(要約者)Y(諾約者、被告)間に契約が認められ、債務者Yがその契約に違反したことにより、第三者X(受益者、原告)に損害ないし損失が生じたというものである。契約責任拡張で対処するか、不法行為責任で対処するか、という問題である(2)。他方、純粋経済損失の賠償認否が問題となる局面とは、XA間の一定の関係から生じるXのAに対する債権や期待権が認められ、加害者Y(被告)がその権利を侵害したことにより、被害者X(原告)に純粋経済損失が生じたというものである。不法行為により、相対権侵害から生じた純粋経済損失は賠償されうるか、という問題である(3)。2と3が同時に発現する事例の分析をさらに進展させる予定である。
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