1.文献研究による知見の獲得 (1)ドイツ協同組合法一般 ドイツ協同組合法は、平成18年に約30年ぶりに大改正がなされた。第一に、小規模企業においても協同組合という法形態の使い勝手が増した。第二に、資本的要素がより濃厚になった。例えば複数議決権を利用できる範囲が拡大した。また投資目的組合員も認められるようになった。同改正にはヨーロッパ協同組合法の影響もみられるが、これは経済のグローバル化に対応した改正である。 同じような状況にあるわが国でも、ドイツやヨーロッパにおけるこのような法整備は、1つの選択肢として考慮に値する。 (2)中央会監査 ドイツでは平成12年公認会計士法改正により、会計士に品質管理(ピア・レヴュー)制度が導入された。1年遅れて協同組合中央会監査にも品質管理制度が導入され、平成18年に改正がなされている。 中央会監査の品質管理制度の特徴は、一言で言うと会計士監査のそれとほぼ同じ枠組みという点である。会計士を会員とする会計士会議所に登録された品質管理人による審査を、会計士と同様受けることにより、会計士監査との同等性を確保しようとしている。 わが国では中央会監査の品質管理制度はいまだ整備されていない。会計士監査とは別に中央会監査を存続させるのであれば、会計士監査におけるのと同様、品質管理制度は不可欠であると思われる。わが国で制度設計する際に、同等性を確保しようとするドイツの制度は示唆に富む。 2.研究発表 上記1(2)で新たに得られた知見を旧著『協同組合における外部監査の研究』に加味し、研究会で発表した。中央会監査の特質・存在意義として挙げた事項に対し、曖昧であるとの批判が出されたが、この点については補足を要する。
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