本年度は、2002年以降中断していた、ドイツ資本市場法における適合性原則ルールの進展をフォローアップすることに重心を置いて研究を進めた。まず、(1)取引所先物取引能力制度を廃止し、証券取引法上の特別情報提供義務へと変容させた2002年の第3次資本市場振興法、(2)わが国の高齢消費者に多く見られるハイリスクの投機取引被害に類似する問題として、投資型年金商品を謳い文句に販売された、不動産投資信託やその他の融資一体型投資モデルが引き起こしたスキャンダル(Schrottimmobilien-Skandal)と、その救済をめぐって錯綜している裁判所の判断を追った。また、(1)ドイツ資本市場法の展開を知る上で不可欠なEU法の動向を、金融庁金融研究研修センターが組織した「EU投資サービス指令後の欧州各国等金融制度比較研究会」に参加し、投資サービスのみならず保険や消費者信用、EUやフランスも含めて、研究分野を超えた知見を得る機会を得た。2006年2月3日には同研究会において、(2)の問題がEC裁判所に飛び火して下された2005年10月25日のEC裁判所判決を含めて、EC消費者法という視覚から整理、紹介した(報告題名「EU消費者法の動向」)。 わが国における消費者契約法の改正においても、適合性原則の法文化の是非、その前提として、同ルールの射程は重要な検討課題となっている。従来から行ってきた消費者信用法とリンクしたテーマとして、消費者信用法の領域(貸金業法)にみられる過剰与信の禁止との関係と適合性原則との関係について、検討を進めている。法律時報へのドイツ消費者金融法に関する原稿の寄稿、(財)政策科学研究所で組織された販売信用取引研究会に参加する機会を得たことを活かし、考察を進めたい。
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