本年度は、3カ年の研究計画の最終年度にあたるため、(1)資産形成取引における情報開示をめぐるドイツの議論状況、さらに(2)わが国における金融取引をめぐる法状況をふまえながら、研究の最終とりまとめ作業を行った。 その作業の中間段階ではあったが、本年度は、これまでの研究で得られた成果を具体的な形で公表することに務めた。とりわけ、その成果を資産形成取引の分野で実践する可能性を提示するため、2007年11月9日に開催された第58回先物取引被害全国研究会広島大会において「商品先物取引における情報提供義務の位置づけと情報提供義務違反の効果」と題する講演を行った。本講演では、商品先物取引にとどまらず、近時、新たな投資商品として注目を集めるとともに投資被害が多発している外国為替証拠金取引における紛争解決へ向けた新たな理論枠組みを提示したうえで、商品先物取引と外国為替証拠金取引という2つの異なる取引の相違点をふまえながら、両者に共通する新たなルールを導き出すことを試みた(その内容は、先物取引被害全国研究会編「先物取引被害研究」第30号〔2008年3月〕5-24頁に掲載されている)。本研究は、わが国における資産形成取引の契約締結毅階での情報開示をめぐる諸問題につき、取引類型に応じた具体的な解決方法にとどまらず、取引類型を横断する形での新たな理論的枠組みを提示することを目的としているが、まさに上述した講演は、その実現可能性を具体的な形で例証しようとしたものである。 なお、研究の最終とりまとめ作業は、現在、最終段階を迎えている。研究の最終成果については、できるだけ早い段階で著書ないし論文の形で公表する予定である。
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