課題「保証人保護に関する法制度の研究:フランス法との比較を中心に」に対しては、現在、以下のように研究を進行中である。 【1 資料・情報の収集】 平成18(2006)年度は、前年度に続き、フランス民法、消費法、倒産法(フランス商法典第6章)に関する文献を中心に、フランス法に関する論文を広く収集した。2006年3月26日のフランス民法典の改正により「第4編 担保」が新設されたため、それをフォローする必要もあった。学会(日仏法学会、私法学会、比較法学会)や研究会(関西フランス法研究会、金融法研究会)その他のセミナーにも参加し、多くの知見を得ることができた。 【2 分析・検討】 前年度までに検討してきたフランスにおける保証制度の全容をふまえつつ、平成18(2006)年度は、わが国における保証制度のしくみについて分析・検討を行った。金融取引の実務において最も切実な貸金等根保証契約については一定の法の整備がなされたが、「留学生の住居賃貸借の保証と大学の責任」で取り上げたような保証がカバーされていないように、保証制度全体への見直しに至っていないことが明らかになった。「保証人の責任制限と信義則-東京地裁平成17年10月31日判決の検討を通じて-」(彦根論叢366号掲載予定)に関する分析・検討において、信義則の具体化により保証取引におけるバランスの再度の見直しが必要であるとの認識に至った。 【3 研究成果の報告、論文の公表】 平成18(2006)年度は、金融法研究会(名古屋大学法学研究科)において「保証人の責任制限と信義則-東京地裁平成17年10月31日判決の検討を中心に-」と題する報告を行い、前掲小稿を執筆した。 本稿は、いわゆる包括根保証における保証人の責任について、以前から信義則に基づいて責任制限がなされてきたが、信義則による制限といっても、信義則に照らして保証範囲を明確にする場合と、信義則に照らして債権者に一定の行為が要請され、債権者がそれに応じていないために保証人の責任が減免される場合の2種類があることを示し、後者につき、より具体的な検討の必要性を論じたものである。
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