平成17年度は、本研究の基礎とするべく、主にドイツ法について考察を試みた。具体的には、2002年ドイツ民事訴訟法改正に伴う関連規定の改正と、最近展開の著しい裁判外紛争処理制度の整備状況に注目した。そして、ドイツ法に関する最新の文献の収集と分析、並びに現地での実態調査を行い、それらを通じて得られた情報を前提として、訴訟上の和解に関する議論への影響を検討した。 その結果、ドイツでは現在、実務を中心に、訴訟係属後も判決に拘泥することなく多様な方法を用いて民事紛争を解決しようとしており、またそれが受容される傾向になってきている、という状況が明らかになった。すなわち、裁判所における当事者の合意に基づく紛争解決の最新動向として、伝統的な訴訟上の和解とともに、裁判所が調停の形で合意形成を後押しする方法(裁判所内調停)が編み出され、一部の州では大規模なモデルプロジェクトが実施されていることが明らかになった。そして、そのような運用の正当性を裏付けるべく、現行法規の解釈や立法の整備が試みられていること、また、法の基本理論との整合性が問題とされ、議論され始めていることが判明した。この裁判所内調停に関する研究の成果は、本研究を遂行する過程で得られたものであり、「ドイツにおける裁判所内調停の試み」と題した論文にまとめ、南山法学29巻2号に公表した。 また、問題点を整理するべく、ドイツの最新動向の調査と並行して、国内での情報収集や意見聴取も適宜行った。
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