平成19年度は、本研究の目的を達するべく、これまでの調査および研究を整理し、さらに平成19年度の新たな調査結果を加えつつ、それらを総合的に精査・検討した。 本研究によって、まず、我が国の和解条項裁定制度においても、実務家からのヒアリングならびに、これまでこの制度が利用されてきた事件の内容や件数などの資料から、実務上は、裁判所ではなく、当事者がその内容を予想以上に広範に確定しており、また制度の運用上もそのようになるように工夫されていることが判明した。昨年4月からのADR法の施行も相まって、今後は、裁判所に頼るのみでなく、当事者による紛争解決が、内容および手続の両面において、さらに多様化するものと予想される。 また、本研究を通じて、ドイツ、オランダなどを中心としたヨーロッパ諸国においても、民事粉争の和解的解決が最近のトレンドであることも明らかになった。そして、最近、そのために裁判所への依存という方法だけではなく、ヨーロッパワイドな制度の調整をMediationという形で実現することがEUとして決定され、当事者意思の尊重を手続上も確保しようとする姿勢が鮮明になった。このような当事者意思を尊重する手続を重視する傾向は、我が国およびヨーロッパ諸国に見られる同様の趨勢であると評価できる。 以上の考察をふまえ、学術上の観点からも、和解条項裁定制度の解釈および運用においては、この点が十分に留意されるべきであると判断される。
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