会社法上の観点-とりわけコーポレート・ガバナンス・システム-から、企業による環境経営を推進する可能性は存在するのか。このような本研究の課題を追求するには、まず、比較法上重要性の高さが認識されている米国の状況を明らかにする必要があった。そこで、事前に収集した情報を基づき、米国型のアプローチについてある程度仮定を立てた上で、17年夏期に渡米し、米国証券取引法、とりわけ社会的情報開示の研究における第一人者であるイリノイ大学C.A.Williams教授に教示を受けながらさらなる情報の収集を行った。帰国後、その成果を論文「Toward Environmental Conscious Management From the Corporate Law Approach」にまとめ、2006年春に刊行予定の英国の雑誌(The Journal of Interdisciplinary Economics)17巻で公表することになっている。 続けて、次の研究対象国である英国の調査を進めたが、その課程で、EUレベルでのコーポレート・ガバナンス改革の最新動向を同時にフォローする必要があったため、こちらの作業も並行して行った。その成果は、2006年3月発行の国際商事法務34巻3号301頁以下「EUにおける企業法制改革の最新動向」においてすでに公表済みである。 その後、2006年3月には、英国における現地調査を遂行し、EU法を専門とするダラム大学Dr.R.Schuezeの助言を仰ぎつつ関連資料の収集にあたった。この海外出張にあたっては、同時に、英国やドイツにならぶEU主要加盟国の一つであるオランダにも足を運び、マーストリヒト大学においてDr.S.F.G.Rammelooの協力を得ながら、オランダの最新会社法制にかかる議論、および企業の社会責任に関する詳細な最新レポートを入手することができた。これらの成果は、18年度以降研究を継続する中で順次明らかにすることを予定している。
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