本年度の研究では、バイオメトリクスの利用に伴う技術的側面及び運用面における問題、ならびに、法的側面における問題について、それぞれ、以下の研究を行った。 a)バイオメトリクスの利用に伴う予測不能な問題への取組みの問題の検討 b)監視手段としての利用に関する問題の検討 c)透明性を確保した上での利用のあり方をめぐる問題の検討 これにより、バイオメトリクスの利用に伴い解決が求められる課題として、主に以下の問題点が明らかになった。 バイオメトリクスを利用するにあたって取得される個人情報とバイオメトリック・データの取得について、プライバシー侵害リスクの低減のための対応、なりすましへの対応など、「個人情報の取得及び利用」にあたっての問題。 取得対象となる個人情報の特定、バイオメトリクスの利用目的の明確化など、「公正かつ適法な処理」の問題。 バイオメトリック・データの本来の利用目的を逸脱した利用に伴う個人の権利利益侵害の可能性、バイオメトリクスを用いた認証を利用できないことによる身体的障害に起因する差別、誤った本人拒否・他人受入に伴う問題など、「過剰利用や差別助長のリスク」への対応。 テンプレート以外に副次的に取得される個人情報など、「センシティブ・データの取扱い」に関する問題。 バイオメトリック・データと他の個人情報との結合、他の組織が保有する情報との結合や共同利用に伴う問題など、「他の情報との照合や関連づけ(マッチングやリンケージ)」の問題。 特定個人の情報の自動集積や追跡に伴う問題、一度取得されたデータが際限なく自動処理されることによる問題など、「バイオメトリック・データの自動処理」に伴う問題。 バイオメトリクスを利用した「モニタリング」の問題。 サーバ認証とクライアント認証モデルそれぞれにおける個人データの「安全管理」上の法的義務の相違に関する問題。
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