1997年以降のイギリス労働党政権による福祉国家改革と、1998年以降のドイツ社会民主党・緑の党連立政権によるそれについて、ワークフェアや失業給付など労働市場政策、および年金政策を中心に研究を進めた。本年度はその最終段階として、これまで行った資料収集や調査の結果に基づき、その類似点と相違を確定し、その原因を理論的に位置づけた。その結果、両政権が、「第3の道/新中道」という形で同様の政策アイディアを掲げ、その福祉国家改革に一定程度収斂状況を生み出しながらも、その政策変化のパフォーマンスやプロセスには違いが見られる点を明らかにした。本年度は、これらの相違の要因について、とりわけイギリスに焦点を定めた上で、その歴史的文脈と政党戦略の観点から解明する作業を中心に行った。その結果、特にイギリスで「第三の道」の諸政策が成功した要因を、イギリスに固有な歴史的パス形成の連鎖と、それを受けた労働党のフレーミング戦略に位置づけている。この研究の成果は、近藤康史『個人・連帯・社会契約の再生--「第三の道」以後の社会民主主義』(勁草書房)として2007年度中に出版される。 なお平行して、上記のような政策・制度変化を政党戦略の観点から分析する際の理論枠組みについても研究を進め、特に現在の比較政治学における「アイディアの政治」の手法の可能性について検討した。この研究成果は、近藤康史「比較政治学における『アイディアの政治』--政治変化と構成主義-」日本政治学会編『年報政治学2006年度第2号 政治学の新潮流』として、発表した。
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