現代アメリカとフランスにおける政治哲学の比較分析を目的とする本研究においては、現代政治哲学の展開における米仏の比較と、そのいずれにもいても注目を集めている思想家アレクシ・ド・トクヴィルに対する現代的読解の、二つの角度から考察を進めている。前者については拙著『政治哲学へ-現代フランスとの対話』(東京大学出版会、2004年)を出発点に、さらに考察を進めている。本年度中にはとくに、現代アメリカの政治哲学との対比において、現代フランス政治哲学の特徴を描くべく、とくに共和主義とデモクラシー論を軸に検討した。その成果は、世界政治学会(2006年7月、福岡)において報告された(「現代フランスにおける共和主義とデモクラシー論」)。 他方、トクヴィルについての研究においても、現代においてなぜトクヴィルが注目されるのか、ということから、逆に現代米仏における政治哲学の問題意識の違いを探った。その成果は研究発表にあるように「トクヴィル復興の意味」という論文にまとめられている。その際のポイントの一つは、現代アメリカにおける自由主義とはかなり異質な意味を持つフランスにおける自由主義であり、トクヴィルの復活は現代フランスにおける自由主義の復活と結びついていることを論じた。 最後に、このような米仏の現代政治哲学との対比との関係で、日本の政治状況についても検討を行った。その成果は、研究発表の一覧にあるように、フランス語で発表された。
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