研究概要 |
初年度の主たる研究実績は、海外における資料調査・収集であった。必要な資料が膨大であることにくわえ、その所在地が分散しているため、まず研究の中心を成す通信諜報(SIGINT)関係の文書を渉猟することにした。その結果、まずメリーランド州の国立公文書館(National Archives II)とヴァージニア州の国家安全保障局資料館(National Security Agency Library)に二カ所にて所蔵されている資料を収集することができた。国立公文書館では、国務省(RG59)、及び国家安全保障局(RG457)の資料を中心に調査を行ったが、その結果、アメリカの通信諜報の歴史や対日諜報の実態について多くを明らかにすることができた。他方、国家安全保障局の資料館では、部分的に秘密指定が解除されているTarget Intelligence Committee (TICOM)の資料、及び解読作業に携わった主要関係者のオーラル・ヒストリー(William Friedman, Frank Rowlett, Laurance Safford)のコレクションを調査し、必要な部分を入手することができた。なお、こうした調査の研究成果は学術論文としてまとめて公表する段階には到達していないが、一般の関心が高いため、2005年1月に、二回に渡って『産経新聞』にて新たに明らかとなった米国の対日通信諜報の実態に関する記事を掲載した。くわえて、この夏には、ある歴史雑誌にも記事が掲載される予定となっている。秋からは、米国に次いで通信諜報関係の資料が豊富であるイギリスにおける資料収集にシフトし、英国立公文書館(旧Public Records Office、現National Archives)にて「対日暗号情報」(通称、BJシリーズ)の調査を行った。しかし、より肝心なブレッチリー・パーク(Bletchley Park)にある国立暗号資料センター(National Codes Centre)での調査はまだ手付かずの状況であり、来年度に持ち越されることになる。なお、2月と3月には、集中して研究報告の機会に恵まれ、リーズ、ケンブリッジ、エジンバラ、アバディーン、ノッティングハムの各大学にて研究の途中経過について公表した。
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