平成17年度は、2年計画の1年目として、スウェーデンの年金制度改革の背景を把握するため、主に二次資料に依拠して1980年代以降の年金制度をめぐる問題状況を把握するとともに、90年代のスウェーデン政党政治の展開を整理し、両者が交錯する中で年金改革の動きが具体化していったことを確認した。その際特に、人口動態や経済状況の変化に対応しうる持続可能な制度の構築という課題を軸に、抜本的な改革が目指されるようになったこと、それが左右両陣営の主要勢力を含みこんだ政党政治の主導で進められたことに注目した。同時に、年金改革を含む近年の社会保障改革に関する国際比較を試みた先行諸研究を検討する中で、特に歴史的制度学派の議論に着目し、福祉国家の再編期にある今日の制度改革においては、これまでの諸制配置の影響として、とりわけ既得権集団の抵抗とそれらへの政治的対応という要素が改革構想の内容およびその成否を左右するという視角を得た。 そのような作業と合わせて、実際の年金改革の検証に向けて、9月には現地での資料収集を行い、年金問題調査委員会(審議会)の答申、社会庁の報告書、国会での法案および議事録の一部等を入手し、年度末までそれらを読み込む作業を続けてきている。引き続きそれを進めた上で、1990年代年金改革の全体の過程を上述の理論枠組みに照らして分析・整理することが平成18年度の課題となる。 なお、平成17年度の研究成果については、一部が近刊予定の共著書(『比較福祉政治制度転換のアクターと戦略』早稲田大学出版会)の担当部分に反映されているものの、平成18度の後半に、同年度分と合わせて一本の論稿にまとめて発表する予定である。
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