本年度は、研究期間の中間の2年目であった。そのため、『グローバル社会民主主義へ-日本労働政治の冷戦史』と題する単著書の執筆を積極的に進め、ほぼ原稿を書き上げることができた。それが最大の成果である。A5判にして300ページ近い著作になりそうであり、完成の目途が立ち、安堵している。 次に、経費の使途について説明を加えると、上記の書物の執筆をおこなう過程で必要となった書籍を購入し、分析に深みを加えた。物品費が当初の計画以上に膨らんだのは、そのためである。また、旅費を用いて海外および国内に出張し、資料収集をおこないたかったが、それがほとんどできなかったことは大変残念である。この点については、機関によっては郵送での注文などもできるので、来年度は積極的に取り組んで行きたいと思っている。また、関係者へのインタビューについても、同様である。 具体的な研究成果としては、生活経済政策研究所が発行する『生活経済政策』という、私自身が編集委員を務めている雑誌に3回にわたって掲載した論文「労働組合の戦後日米関係史」のみである。これは一般向けのものであり、研究成果と称するにしてははなはだ不十分ではあるが、この研究がどういう規範的・実践的な含意を持つのか、その点を明確化できたことは十分な意味があったと考える。また、短い論文であるため、比較的多くの読者を得ることができ、批判を含めて様々な反応を得ることができたのも大きな収穫であった。今後は、それを上記の書物の改善につなげていきたいと考えている。
|