研究の最終年度である今平成19年度は、これまでの研究を踏まえて、最終的なまとめに専念した。そのために必要な資料を収集するとともに、主に書籍の購読を通じて、既存の研究との関係を明確化することに努め、執筆を行った。そして、最終的に『日本労働政治の国際関係史』と題する本の原稿を完成し、平成20年度に岩波書店から刊行されることが決まった。これは、主として、1945年から1964年の時期を取り上げ、アメリカ、イギリスを含めて、日本に対する国際的な圧力が、複数存在していたこと、とりわけ反共産主義の枠内でも、反労働組合的な外圧ばかりでなく、労働組合を育成し、日本の労働者の賃金や労働条件の向上を図ろうとする動きも同時に存在し、これが今日の連合(日本労働組合総連合会)の結成に至る労働戦線線の統一を後押ししたことを、資料を用いて実証した書物である。戦後史に関する新しい認識を提供できるものだと確信している。 それとあわせて、その一部をなす「ケネディ・ライシャワー路線の背景-日米貿易摩擦と国際公正労働基準」という論考を執筆して、前任校である大阪市立大学の『法学雑誌』(加茂利男教授退職記念号)に掲載した。この論文は、1960年代のケネディ政権期を取り上げ、日米貿易摩擦(日本からアメリカへの輸出の急増)への対応策として、アメリカが国際公正労働基準という概念の下、日本の労働者の生活水準を向上させようとしたことを実証したものであり、従来のケネディ・ライシャワー路線の評価を変えるものである。
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