二年目の18年度は、17年度の成果をさらに補充・発展させる形で研究を進めた。17年度は、対人地雷禁止条約の事例を用いて、国際規範カスケードを現出させる諸国家の動きに焦点をあてて理論を実証したが、今年度はNGOと国際機構についての分析を加え、それらと諸国家の動きとを比較して、規範カスケード過程における国家とNGO国際機構との間の特殊な関係について整理した。この知見は、「規範カスケードにおける評判政治(中の三)」という論文にまとめられた.また、国際地域ごとの国家水流とNGO水流とを比較した実証研究を、国際政治学会秋季大会において報告した。さらに、これまでの研究を理論的に統括しながら発展させたものとして、規範カスケード過程における国際政治と国内政治の連動メカニズムと、その連結点としてのトランスナショナルNGOの政治的行為の特徴についてまとめた論文「多国間条約形成におけるトランスナショナル社会運動の動的共寝モデル」を発表した。18年度には、このほかにも、規範カスケード過程を特徴付ける二陣営間の政治的駆け引きを理論化するために、対人地雷禁止条約形成過程において、全廃派に対する対抗陣営として政治的に重要な役割を果たした米国が、なぜ国原的リーダーシップをとるのに失敗したのかという点についての研究もおこない、その訓告のための短期海外出張も行ったこの点についての分析結果は現在越鋭意執筆中であり、19年度中の発表を予定している。
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