日本およびドイツにおいて、市町村レベルで外国人がどのような社会的権利・市民的権利を獲得しているのか調査・比較を行った。日本の市町村においては、外国人住民の規模、性格といった点で大きな多様性が認められ、そのため行政サービスについてはそれぞれの自治体の状況によって大きく異なることが確認された。他方ドイツでは、連邦国家であることから州政府の方針・政策が下位の自治体の政策実践を左右する。その上で、帰化に関してまでもが州政府の管轄にあり州ごとの相違が見られる。日本では外国人の集住が見られる自治体が、国レベルでの対応を強く求めている状況と比較して、ドイツでは上位の政府に対して同様の要求は見られない。日本では外国人住民に対して地方自治体が社会的権利を拡充する方向で政策を進めようとしているのに対し、ドイツではその段階はすでに過ぎている。 外国人住民が移民として地域に定着している現実から、外国人住民は日本でもNPO、NGOといった諸種の市民活動を行っており、それを地方行政も部分的に把握し、サポートしている。日本ではこれらの活動は行政からも研究者からも肯定的にとらえられているが、ドイツでは他のヨーロッパ諸国でも見られるように、移民の市民活動がかえって出身国を同じくする者同士に限定されたコミュニティーを強化し、社会の分断を深めているとする見解が強い。日独いずれにおいても移民の市民的権利そのものは認められ、実践されているが、ドイツではそれが移民を内国人と同等の市民として認める方向には必ずしも結びついていないし、日本でも移民の規模が拡大していくと考えられる将来については、楽観視できるとは言い切れない。
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