OSCE(欧州安保協力機構)で現在までに行われてきた選挙監視活動を再検討するための基礎的資料として、OSCEが現地調査団を派遣した事例について、比較検討を行った。また、OSCEの選挙監視活動の中で中心的役割を果たすODIHR(OSCE民主制度・人権事務所、在ポーランド)を訪問し、OSCEの選挙監視を実施した外交官へのインタビュー・リサーチや一次資料の収集を行った。その結果、OSCE内部において、選挙監視団派遣先の受け入れ国との外交上の関係や現地ミッションとの関係等、多くの点で課題が解決されないままであることがうきぼりとなった。特に旧ソ連諸国では民主化がすすんでいない場合が多く、OSCEと当該国との関係をどのように外交的に解決するかが問われる。 また理論面では、OSCEの選挙監視活動に際する国際協力を包括的に分析するために、欧米における国際レジューム論についての近年の文献にあたった。その結果、国際レジューム論がこれまであまりとらえてきれていなかった<as if的行動>について、外交上の意思と実際の履行との間の大きな乖離をどのように解釈するべきかについて、理論的な示唆をえることができた。特に、OSCE加盟国の一つであるトルコの国際法学者の研究はたいへん示唆に富むものであり、OSCEが枠組みとしてのレジュームの維持に力点をおいてきた結果、履行措置や履行状況については十分にはOSCE内で検討されてこなかったことが主張されている。
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