本研究では、OSCE(欧州安全保障協力機構)が実施してきた選挙監視活動を、国際レジームの有効性が確保されてこなかった失敗例に着目して分析を行った。まず、OSCEの選挙監視活動が国際レジームとしてどのような意味をもっているかを明らかにした。OSCEのレジームとしての脆弱性にその原因を見出し、それが制度上の脆弱性のみならず、OSCEを支える政治的資源の過少によってひきおこされることが新たな知見として見出された。第二に、ベラルーシや中央アジア諸国でOSCEが十分に機能を果たすことができなかった原因を、OSCEと現地国の政府、NGO、周辺諸国の関係を分析することを通して、調査した。その結果、現地政府がOSCEの掲げる理念を十分には共有しておらず、移行国ということでこれまで不問にされがちであった価値共有をめぐる深刻な対立を本研究を通して露わにすることができた。 この状況で、OSCEがどのようにすれば各国の選挙制度を改善させて民主化を促進できるか、を考察するべく、資料収集等を行った。研究の成果として、あたかも(as if)OSCEの価値を共有しているかのごとく言明しつつ、実際の行動ではそれに反することを行う<as if game>がこの争点領域でも見られることが解明された。そこでNGO(非政府組織)やOSCE内の大国が影響力を行使することにより、ウクライナのような事例では問題改善がみられたものの、ベラルーシなどの諸国では、構造的な問題解決に至る過程を観察することはできなかった。
|