平成18年度は、研究期間のちょうど中間にあたり、これまでの作業を継続しながら、最終年度の成果を見据えることができた。具体的には解雇規制の理論的分析と並行して、収集したデータの整理を行った。 まず、不当解雇の際の救済方法として、職場復帰と金銭補償の二通りが存在するが、その救済方法の違いが経済に与える影響を分析した論文が国際学術誌Journal of the Japanese and International Economiesに公刊された。 この他に、研究代表者はこれまで不完備契約のもとで解雇規制が有効になる可能性を示す論文を執筆していた。この論文は解雇規制をめぐる議論の中で積極的に取り上げられることが多く、肯定的な見方と否定的な見方とが並立していた。否定的な見方の根拠の一つは、この論文は部分均衡分析の枠組みの下で行われたにすぎないというものである。そのため、サーチ理論を用いて経済全体の効果を考慮する理論的拡張を行い、これまでの論文の主張が経済全体までを考慮に入れても成立しうることを理論的に示した。また、コンピュータ・シミュレーションを行い、よりはっきりと規制の影響を示す作業を現在継続中である。 また、一昨年度に収集した東京地裁であらわそれた解雇事件に関するデータを整理し、現在分析中である。本研究の最終年度にあたる平成19年度には、コンピュータ・シミュレーションとデータ分析の双方から、解雇規制の効果についてより明確な結論が得られることが期待できる。
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