平成19年度は、研究期間の最後にあたり、これまでの作業を継続しながら、まとめる作業を行った。具体的には解雇規制の理論的分析と並行して、労働者保護が必要となる環境を考察した。 解雇規制をはじめとした各種の規制や労働者保護項目は、市場取引が円滑に進めば不要となる場合もある。どのような場合に保護が不要になったり、必要になったりするのかについて、法と経済学の見地から分析した。その成果は、「労働者性と不完備性:労働者が保護される必要性について」と題する論文としてまとめられ、日本労働研究雑誌で発表された。 解雇規制に関しては、これまで分析してきた違法解雇の救済方法の違いに関する理論分析と、解雇規制の経済効果に関する経済理論に関する整理を行い、神林龍編「解雇規制の法と経済」(日本評論社)所収の論文としてまとめた。また、我が国の解雇規制の効果については、神林龍氏と共同して、「経済セミナー」誌上で概論をまとめ発表した。 この他に、継続中だった、解雇規制の効果に関するコンピュータ・シミュレーションを行い、論文としてまとめるまでには至らなかったが、まとめうるだけの十分な解析が終了し、セミナーなどで発表した。現在、論文として執筆中である。 本研究は、解雇規制に関する理論的分析を中心に、データ収集やコンピューター・シミュレーションまで行った。雇用法制に関する議論が政策課題になった時期でもあり、学術的な研究成果を出すことはもちろん、政策策定を常に意識しながら研究を進めることができ、緊張感を抱きながら仕事をする機会にもめぐまれた。
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