研究概要 |
研究計画初年度に当たる平成17年度は、昨年度までの複数の研究成果の学術雑誌への投稿および文献調査・情報収集を中心に研究を進めた。本研究課題で対象となる動学的選好の公理化の基礎として、Sarin and Wakker(1992)のショケ期待効用理論の公理化に着目し、この経済モデルを動学的選好に拡張した上で追加的な公理を入れることで、動学的整合性を満たすナイト流不確実性下の選好を表現できることを指摘した。この研究成果は、数学的議論を精緻化した上で、今後学術論文としてまとめていく予定である。また、Gul and Pesendorfer(2001)およびDekel, Lipman, and Rustichini(2001)など、本研究課題と密接に関わる問題意識から行われた研究についてレビューを行い、本研究課題との関係を整理した。本研究課題では、ショケ期待効用理論に着目し、これを動学的に拡張することを主眼に置いているが、Gulらの研究やDekelらの研究では、lotteryの集合に関する選好を議論することで、動学的整合性や柔軟性への選好について議論していることに相違点がある。 また、Econometric Society World CongressとASSA meetingなど、海外の最新の研究動向にも注意を払い、内外の研究者との積極的な意見交換を行った。平成18年度には、海外の複数の研究機関で研究発表を行う予定である。ほかにも、実験経済学的アプローチから過去の研究成果および本研究課題の研究成果の妥当性を検討することを予定している。
|