都市(東京都)における集積の経済・不経済を計測するに当たって、(1)インフラの整備状況、(2)住宅の構造別分布、(3)自然災害や都市犯罪といった集積していることで大きな外部不経済をもたらすであろう都市データ、(4)都市計画・都市開発に関する規制の状況の4つの点についてGISを活用し空間データベースを構築し、このデータベースを用いて、空間統計学の手法を適用した計量経済学分析を行うことが本研究の目的である。 平成18年度では、平成17年度に作成したGISデータベースを用いて、地震リスクが、地価住宅賃料といった市場価格にどのような影響を与えているのかを測定した。その結果、地価や賃料といったものに、地震リスクが反映されており、居住者は、これらのリスクに対して危険回避的に行動していることが実証分析により明らかにされた。以上の分析の論文は、Regional Science and Urban Economicsの雑誌に公刊された。 また、人が集積して立地することによる治安の悪化の影響を定量化するために、町丁目別の犯罪発生件数のデータをGISのデータベースにのせることにより、犯罪発生率と地価との関係の分析を行った。その際に、地価関数に含まれる犯罪発生率の変数が内生性の問題を引き起こすために、操作変数の一つとして町丁目ごとの道路割合のデータをGISで作成し導入した。以上の分析は『日本経済研究』に公刊された。 さらに集積の経済・不経済に密接に関係する通勤の混雑問題についての研究も継続的に行っている。その結果、分担執筆の図書、日本語雑誌に論文を公表してきた。
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