研究概要 |
今年度は,研究実施計画にもとづいて ・デフォルトの発生確率を分析するための計量モデルの開発 ・提案した計量モデルに対するマルコフ連鎖モンテカルロ法の開発 を中心に研究を行った.平成18年度における研究成果は以下の通りである. 1.プロビットモデルとポアソン回帰モデルを組み合わせた内生的スイッチングモデルを考え,従来の接近方法とは異なるモデルの定式化を提案した.また,本研究で提案する定式化に対するマルコフ連鎖モンテカルロ法を開発し,シミュレーションや実データによる数値実験を通じて,新たな定式化を採用することによって推定効率が改善されることを明らかにした.これらの結果は,論文"カウントデータに対する内生的スイッチングモデルのベイズ推定について"にまとめられている. 2.昨年度に引き続き,プロビットモデルの拡張である多項プロビットモデルを取り上げ,マルコフ連鎖モンテカルロ法による推定効率の改善に関する研究を行った.昨年度の研究で明らかになったように,通常のマルコフ連鎖モンテカルロ法による推定では非常に収束が遅い.そのため,今年度はLiu(2003)によって提案されたalternating subspace-spanning resampling法の多項プロビットモデルへの適用ならびに拡張を行った.その結果,本研究で提案する推定方法は既存の方法よりも簡単に実行することができ,さらに,これまでの推定方法よりも収束や推定精度においても改善されることを明らかにした.この研究成果については,FCSコンファレンス「計量経済学の最近の展開」(下関市立大学・2月)において発表を行った.
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