今年度は、以下の3点において、研究の進展が見られた。 (1)農薬使用量や散布の推移にどのようなトレンドが見られるかを、いくつかの作物について調査を行った。その中で、りんごについては比較的あきらかなトレンドの変化が見られたため、それを論文にまとめた(福島大学研究年報第2号)。これによると、1996年以降は、散布面積については減少トレンドがあるごとが明らかとなった。1990年代は、果汁を含む貿易の自由化、有機農産物のガイドライン・特別栽培農産物制度め導入、農薬製剤進歩など様々な要因があったため、どの要因がもっとも効いているかについては、さらに分析を必要とする。 (2)農家の生産行動に関する理論的な分析を進めた。具体的には、貿易自由化による農産物価格の変化が兼業構造と農薬便用(その他生産要素の使用も含める)に与える影響を明らかにした(商学論集第75巻4号)。農地の貸借取引が行われない状況においては、農薬使用は必ず減少するものの、農地の貸借取引が行われやすい状況では逆に農薬使用が増加する可能性があることを明らかにしている。 (3)ヒアリングなどの調査により、農家の農薬購入は比較的防除暦や新製品の開発状況に依存しでいることが明らかとなったため、農薬の供給サイドから実証分析を進めた。農薬メーカーが個々の製剤市場に参入する要因の分析を行った。説明変数としては、(1)農楽への依存度、(2)全農ルートへの依存度、(3)原体開発の有無などの企業の組織形態を用いた。農薬産業の構造という観点から、農薬使用への影響を考察している。これは、今年度中に学会発表、および投稿を行う予定である。 このほか、引き続き茶、野菜、みかんなどについて、各産地の農業試験場などにヒアリングを行っており、農薬便用の変化の実体について調査を行った。
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