研究概要 |
本研究は,(1)個々の経済主体に権限を移譲しつつ,主体間の連携を強めてアップサイジングを実現するためのメカニズムを解明し,(2)生産者経済といわれるわが国に合った,より善い政策フレームワークを構想することを目的としている。「分権的な産業労働政策の経済効果」と「ICT(情報通信技術)を利活用した制度設計」に焦点をおく点に,本研究の独自性がある。 初年度に当たる平成17年度は,「地方自治体の内発的発展促進意欲が地域雇用に与える影響」について,都道府県単位のデータセットを構築して実証分析を試みた。具体的には,地方自治体の経済振興意欲や創意工夫がダイレクトに反映されると考えられる「構造改革特区」と,地方自治体の知識共有・連携促進基盤の整備意欲を代理すると考えられる「行政情報化」について,地域雇用に与える影響を実証的に検討した。その結果,少なくとも分析時点における行政情報化の雇用創出効果は,国の集権的な施策に基づく公的支出に因っていることが明らかになった。 そこで平成18年度は,「電子行政」に隼点を当て,行政情報化政策を持続的な地域雇用創出等の成果に結びつける経路の解明を目的として研究を実施した。まず,電子行政の取組みが必ずしも成果に結びついていない理由を明らかにし,(1)価値連鎖モデルの構築,(2)横断的評価体制の強化,そして(3)PDCAプロセス・ガバナンスの確立が不可欠であることを示した。次に,個票データを用いて基礎的自治体IT投資の実態を解明し,行政情報化における自治体間連携や官民連携の経済的・社会的効果を定量的・定性的に分析した。最後に,SOAベースの電子地域プラットフォームを社会基盤としてビルトインし,「協働に基づく柔軟な公共ガバナンス」を発展させることで,地域経済を活性化し,豊かな地域コミュニティを創造するという今後の進むべき方向性を示した。
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