研究課題
自動車交通安全規制政策の有効性と効率性に関して、大きく分けて2つの研究を行った。第一に、自動車安全規制としての車検制度が、交通事故率を低下させる政策手段としてどの程度有効であるかを実証的に検討した。このテーマに関しては、既に1970年代のデータを用いて、車検制度の導入が交通事故を減少させるのに有効な手段ではないとの証拠を示す論文を執筆したが、ここでは保険会社から提供された自動車保険の個票データ(1999年)を用いて、再度、車検制度が安全規制として有効でないことを示した。本研究の貢献は、個票データを用いたことに加えて、異なる種類の事故を用いたこと、ノンパラメトリック・パラメトリックの複数の統計手法を用いることで、結論の頑健性を確認したこと、の3点である。この研究成果は、論文、"Evaluating Automobile Safety Inspection : Nonparametric Approach Using Auto Insurance Data"にまとめられている。第二に、運転者の属性と運転行動に関するもので、事故確率にリスク回避度が与える影響について、定量的な分析を行った。リスク回避度が運転者の行動に与える影響については、ほとんど先行研究が存在しないため、新規性のある研究テーマといえる。まず、リスク回避度を推定するためのモデルを作り、自動車保険データから推定されたリスク回避度と事故発生確率との関係を検討したところ、リスク回避度の高い運転者ほど事故確率が低いとの結論が得られた。またリスク回避度が事故の発生に与える影響は大きく、リスク回避度が事故発生確率の重要なファクターであることを指摘した。以上の研究成果は、論文、"An Empirical Analysis of the Roles of Risk Aversion in the Automobile Insurance Market"にまとめられている。
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Journal of Risk and Insurance (forthcoming in June 2006 issue)
a doctoral dissertation submitted to the University of Tokyo, September 2005.