1.連系線容量を考慮した寡占的卸電力市場モデルのプロトタイプの構築 一連の研究の土台づくりとして、均衡制約をもつ数理計画問題(MPEC : Mathematical Program with Equilibrium Constraints)の手法を応用して、連系線容量を考慮したクールノー型卸電力市場モデルのプロトタイプを構築した。このプロトタイプモデルに関して、均衡解の導出方法を理論的に考察した上で、さらには、数値解を導出するためのプログラムを開発した。 2.日本の実際のデータを用いた寡占的卸電力市場のシミュレーション分析 1.で構築したプロトタイプモデルを土台として、連系線で結ばれた日本の9地域・事業者に関して、実際のデータを用いた寡占的卸電力市場のシミューレーション分析を行った。既存の連系線容量を所与とした場合、いくつかの連系線の容量が大幅に不足するため、均衡解が存在しない結果となる。そこで、均衡解が成立するために必要な各連系線の送電容量を、シミュレーションにより導出した。その結果、特に、関東-中部間、および中部-関西間の連系線容量を大幅に増強する必要があることが明らかになった。 次に、9事業者を企業分割するケースを考え、電力潮流やクールノー均衡に与える影響について、複数のシナリオのもとで検討した。その結果、関東に立地する最大手の既存事業著を、他の事業者に比べて相対的に多く分割することで、社会的余剰が増加することが明らかになった。 3.送電設備の効率的な形成を導くインセンティブ規制の導出・精緻化 電力潮流を考慮した形にプライスキャップ規制を拡張することで、複雑なループ状送電線網において、電力システムに特有な技術的外部性を内部化し、効率的な設備形成を導くことが可能であることを示した。また、増分余剰補助法の応用も有効であることを示した。
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