研究概要 |
「交付申請書」の「研究の目的」のうち、(a)危機を事前に防ぐための政策(資本規制によって危機を遅らせる政策や資本流入に占める直接投資の比率を高める政策等)については、以下の研究成果があった。 (1)"The Government's Foreign Debt in the Argentine Crisis"の論文が、Review of Development Economicsにて公刊となった。この研究は、アルゼンチンの危機について考察し、カレンシーボード制が採用されていたにもかかわらずなぜ通貨危機が発生したかを説明し、通貨危機を考察する上で政府の対外債務残高が重要な指標であることを示した。 (2)"Capital Controls, Public Debt and Exchange Rate Crises : Do Capital Controls Delay Crises?"の論文を、2005年度・日本経済学会(京都産業大学2005年6月)にて発表した。この研究は、資本規制下においては、国内利子率が完全資本移動下に達成される世界利子率から乖離する点に注目し、政府の国内債務の利払い負担が増大するため、資本規制が本来の目的とは逆に、危機を早めてしまう可能性があることを理論モデル化し明確な分析を行ったものである。現在レフェリー論文に投稿中である。 (3)『FTPL通貨危機モデルにおける資本規制』の論文を、2005年度"MME in Kobe"(神戸大学2005年9月)において発表した。この研究は、一般にラテンアメリカ諸国の危機を理解する上では、シニョレージが重要な鍵となるが、アジア諸国は比較的インフレ率が低く、オーソドックスなこれまでの通貨危機モデルでは十分な説明ができないため、"Fiscal Theory of Price Level"(物価の財政理論)の視点を導入し、新しい展開を目指し、検討中の課題となっている。
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