研究概要 |
本研究では,各経済主体による廃棄物発生のメカニズムの定式化を行い,それが各経済主体にいかなる影響をあたえのかについて環境経済学ならびに空間経済学の観点から理論的に明らかにすることを目的としている.主たる研究成果は以下の通りまとめられる. 『‘Industrial Garbage Tax and Environmental Policy Game under a Two-Region Model』では,財を生産する企業が何らかの廃棄物を生産工程において排出し,それをリサイクルもしくは委託処理し,委託された処理業者が不法投棄する可能性をモデル化した.分析の結果,1地域モデルにおいては,処理業者に補助金を与えることがモニタリングを強化する政策よりも望ましが,2地域モデルに拡張し,地域間で政策ゲームを行った場合,1地域では望ましかった補助金政策が必ずしも望ましくないことを示した. 『Trans-boundary pollution transmission and regional agglomeration effects』では,新しい経済地理学の代表的モデルであるKrugman(1991)に工業部門が排出する汚染が農業財部門の生産性に影響を与えるようなモデルを構築し,越境汚染の程度が地域間の人口分布にどのような影響を与えるのか,さらには,環境政策としての課税が人口分布に与える影響についてもシミュレーションによる分析を行った.分析の結果,地域間で均等な人口分布となる均衡が安定から不安定に変わる臨界点に交通費と越境汚染の比率が影響することを示した.また,環境政策として外国の工業財に課税を行った場合,人口が減少することが分かった. 『人口,技術選択および環境政策』では,工業財部門が収穫一定から収穫逓増への技術の転換をモデル化し,さらには工業財部門の活動が家計の環境に影響を与えるようなモデルを構築し,汚染と技術の転換がどのような関係があるのか,さらに実証的に示された環境クズネッツを生成する1要因としてこの技術の転換が考えられることを理論モデルを用いて説明した.この論文は『Population, Technological Conversion, and Optimal Environmental Policy』として英訳され,2005年度日本経済学会春季大会(京都産業大学),52nd Annual North American Meetings of the Regional Science Association International (Las Vegas)において報告を行った.
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