為替制度の選択問題は、国際経済学(特に国際金融)において、最も重要なトピックの一つであり、過去十数年間研究されてきた。そしてこのトピックは、現在、1990年代の一連の通貨危機により、学界、各国の政策当局者により、より議論されるようになってきた。国際的資本移動が活発に行われている現在において、安定的かつ持続可能な経済成長を達成するためには、各国はどのような為替制度を採用すれば良いのであろうか。そこで、本研究の目的は、様々なデータ、計量手法を用いて、実際採用されている様々な為替制度・政策の系統的な特徴を明らかにし、有益な政策的インプリケーションを提供することである。 そこで、平成17年度では、主にデータの整備と分析手法の開発を行った。特に、(1)資本移動の自由化(規制)に関するデータ、(2)各国の政策当局者がアナウンスしている為替制度のデータ、(3)政策当局者が実際に採用していた為替制度のデータ、(4)各国の経済パフォーマンスのデータ等の様々なデータの整備・加工を行った。また、実証分析を行うための適切なモデル、分析手法の研究開発を行った。 そして、試験的ではあるが、Fear of Floating政策(変動相場制を採用しているとアナウンスしている国が実際は、為替レートの自由な変動を許さない、つまり、固定度の強い為替制度を採用している政策)の要因分析を行った。その結果によると、自国通貨建てで海外から資金を借りる能力の欠如した国、つまり、バランスシートのミスマッチが大きい国が、自国通貨の減価による自国通貨建て対外債務の大幅な増加を恐れて、Fear of Floating政策を採用していた。
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