研究課題
為替制度の選択問題は、国際経済学(特に国際金融)において、最も重要なトピックの一つであり、過去十数年間研究されてきた。そしてこのトピックは、現在、1990年代の一連の通貨危機により、学界、各国の政策当局者により、より議論されるようになってきた。国際的資本移動が活発に行われている現在において、安定的かつ持続可能な経済成長を達成するためには、各国はどのような為替制度を採用すれば良いのであろうか。そこで、本研究の目的は、様々なデータ、計量手法を用いて、実際採用されている様々な為替制度・政策の系統的な特徴を明らかにし、有益な政策的インプリケーションを提供することである。そこで、平成18年度では、平成17年度に整備したデータ、適正な計量分析手法を用いて、為替制度と通貨危機の関係を中心に実証分析した。具体的には、1980年から2001年の期間における84カ国において、為替制度と通貨危機の発生確率の関係をノンパラメトリック検定を用いて検証した。分析結果によれば、第一に、公的な為替制度と実際の為替制度、共に、管理フロート制が他の為替制度に比べて危機発生確率が統計的に有意に高かった。しかしながら、資本規制の有無を考慮した場合、公的な為替制度と通貨危機の発生確率との間に統計的に有意な関係がなくなったのに対して、実際の為替制度と通貨危機の発生確率には統計的に有意な関係があった。特に新興市場経済と途上国においては、資本規制と資本自由化の下どちらにおいても、管理フロート制が他の為替制度に比べて危機発生確率が統計的に有意に高かった。第二に、資本規制の有無を考慮してもしなくても、両極の為替制度とソフト・ペッグというカテゴリーの違いと通貨危機の間に因果関係がないので、bipolarviewが成立していなかった。しかし、第三に、金融政策の自由度と通貨危機の関係の分析結果によれば、金融政策の自由度がなく、規律が厳しい制度である資本自由化の下でのべッグ制(ハード・ペッグ)が通貨危機の発生確率が統計的に有意に低かった。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件)
New Developments of the Exchange Rate Regimes in Developing Countries(Palgrave Macmillan.)(in H Mitsuo (ed.))
ページ: 8・58
Kobe City University of Foreign Studies Working Paper Series No.22
ページ: 1・58