研究概要 |
本研究の目的は,高度な科学理論の登場による技術開発の方向性の変化や,それに伴う新しい企業緯織の登場が研究開発に与える影響を,研究開発の効率性の観点から検証することである.分析手法にはDEA/MI(DEA Malmquist Index)を用い,DEA/MI指数をキャッチアップ効果とフロンティアシフトに分解し,各企業の研究開発効率の推移を時系列的にとらえ,産業間の技術の方向性の違いを検証するものである.本年度は,以下のように実施した. (1)企業の研究開発効率分析およびDEA/MIを用いた先行研究を調べた.研究開発投資に対する成果は,近年低下傾向にあると言われているものの(榊原・辻本,2003,Tollman et al.,2004)定量的な分析は十分に行われていない. (2)製薬企業(含バイオ企業)のデータをサーベイし,パネルデータを作成した.効率性評価のインプットには研究開発投資額,アウトプットには公開特許数,医薬品売上高,営業利益を用いた.分析対象期間は1982-2001年の20年とした. (3)DEA/MI指標の2時点間の間隔を一年次毎にシフトさせ、時系列的な推移を測定した.1982年を起点として2001年までの累積MI指数を用いた分析結果から,1982-2001年の日本の製薬産業の研究開発効率の低下傾向を明示化した. (4)DEA/MI指標を、キャッチアップ効果とフロンティアシフトに分解し計算を行った.この結果,研究開発効率の低下は,キャッチアップよりフロンティアシフトの影響をより強く受けていることがわかった.産業平均の累積フロンティアシフト指数の推移を用いた分析から,日本の製薬産業全体の研究開発効率は,増減があるものの1982年から2001年にかけて確実に減少傾向にあったことが示された.
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